|
|
|
|
|
|
|
春のある日、山椒の葉にアゲハの卵を見つけ、観察を始めたその生態は、驚きと不思議に満ちていました。変化に富む行程のなかでとりわけ不思議なのが、蝶になる直前の蛹の時期です。それまでとは打って変わって、死んだように無反応になる、ファラオの棺のような形の蛹。 |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
その内部では、全く目的が異なる体に生まれ変わるための、細胞の死と生成の同時進行、つまり、幼虫の体をどろどろに解体する大改造が行われているらしいのです。臨死のような蛹のときを越えて生まれ変わる小さな姿に、変わろうともがいている私たちの姿を重ねてみます。
|
|
|
|
|
|
|
|
|
誰に教わることもなく、一連の手順を一途に実行して見せた8匹のアゲハが示したのは、”生きる”姿でした。そして9匹目の存在。1匹のみ落下によって命を落としたことは、野生のたくましさの影としてある命の脆さも示し、その1匹によってこの世の真実を見た気がしました。
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
長い蛹のときを経て、殻を破り、羽をつけて現れたアゲハが意を決したように飛び立ち、澄んだ空に消えたとき、その姿は、アゲハが身をもって人間に示した“生まれ変わる手本”のように思えるのです。
丸山芳子 |
|