発信//板橋//2013

ギャップ・ダイナミクス

   
2013年11月26日〜2014年1月5日
板橋区立美術館
 
板橋区内の現存作家の活動の活性化をめざして開催する「発信//板橋」シリーズは、展覧会コミッショナーがテーマにふさわしい作家を選び、展示を行います。2011年に続き、2回目となる今回は、板橋区内(常盤台)在住の美術家、丸山常生・丸山芳子の両氏がコミッショナーをつとめます。

今回のタイトルは「ギャップ・ダイナミクス」。これは、森林生態学の用語で、生い茂った森林の中で大木が倒れることによって森の頂にぽっかり空いた穴のような空間(ギャップ)が生まれ、暗かった森の底に陽光がさし、新たな発芽と成長が移り変わる現象のことです。このギャップを社会につけられた傷のようなものと解釈し、今展のテーマとしました。それは言うまでもなく、出品作家たちのそれまでの制作や活動の意義、そして社会のあり方に再考を迫られた3.11以降の時代への応答を示唆しています。

傷はいつまでも傷のままではなく、回復過程の中で何か新しい生命力が付与されていきます。それぞれの作家たちは、インスタレーション、絵画、彫刻、写真、パフォーマンスなど多様な表現方法で、創造的なダイナミズムをその制作過程の中に込め、あらためて問いかけます。「芸術がもたらす生命力とは?」それは社会に起きた事への単なる応答を超えた、新たな端緒を切り開くことになるでしょう。
 
 ◎アクセス
 <東武東上線成増駅北口からのバス>
●2番乗り場から1時間に2本、美術館前に停車。
●1番乗り場から赤羽駅行きは10分に1本、
10分もかららず「赤塚8丁目」(松月院のところ)で下車、大仏通りを徒歩4分。

詳しくは「てくてくお散歩マップ」を参考に!
http://www.itabashiartmuseum.jp/art/info/images/tekutekumap-s.pdf

 
 

   丸山芳子(造形科10期生)

  
プロフィール:
1957年  福島県生まれ 東京都板橋区在住 創形美術学校造形科卒業
1986-08 「板橋の現代作家」「板橋の現況」「板橋の作家」板橋区立美術館、東京
1997    「Ann Art」国際フェスティバル セント・アン湖畔、トランシルバニア、ルーマニア
1998    「加害/被害」板橋区立美術館、東京
1999    「New Faces of Art in Asia」BWAルブリン,ルブリン、ポーランド
2001    「On the Edge」国際展 ビリニュス・ニダ等3都市、リトアニア
2004    「Between Eco & Ego 2004」川口市内11会場、埼玉 /ナクソスタウンホール(市共催)、ナクソス、ギリシャ
2007    「地表の肌理」川口市事業アーティスト・イン・スクール 市立アートギャラリー・アトリア、川口、埼玉
2008-11 「トロールの森」国際野外展 都立善福寺公園、東京
2009    「Rain Meets Sun」M.K.チュルリョーニス国立美術館、カウナス、リトアニア
       「はじめる視点 〜岡本太郎の博物館・博物館から覚醒するアーティストたち〜」福島県立博物館、会津若松、福島
2010    「Art Ii Biennale 2010」KulttuuriKauppila Art Centre & the Culture Tradition Path、イー、フィンランド
       「会津・漆の芸術祭」会津若松・喜多方・三島・昭和の多数の会場、福島
2011-13  「Art in Nature 2011」国際野外展 シャリンゲイ、ボーデ、ノルウェイ
2012      「サナギのとき」画廊企画シリーズ個展 トキ・アートスペース、東京
2013     「精神の<北>ヘ vol.1」国際展 はま・なか・あいづ文化連携プロジェクト 三十八間蔵、喜多方、福島
   
  本展に寄せて:

 春のある日、サンショウの葉にアゲハの卵を見つけ、観察を始めたその生態は驚きと不思議に満ちていました。とりわけ不思議なのが、青虫から蝶になる間のサナギの時期です。動き回って葉をむさぼる青虫とは打って変わって、死んだように無反応になる、古代エジプト王の棺のような姿。その内部では、全く異なる体に生まれ変わるために、青虫の体をドロドロに解体する大改造、つまり、細胞の死と生成が同時進行で行われているらしいのです。
今回の展示では、生まれ変わろうとしているサナギの体内の不思議を表します。昆虫も森の樹々も、変化する環境に対応して生きのびようとしています。それは、3.11以降、変わろうとしている私たち人間も同じだと思うのです。